共同行動から

差別と暴力を内包する天皇制「奉祝」反対全国集会・デモへ!  

                  国富建治

 4月11日の「めでたくないぞ結婚〈50年〉即位〈20年〉 リードイン・スピークアウト集会」から公式にスタートした私たち「え~かげんにせーよ」共同行動の集会も、いよいよ大詰めを迎えている。9月6日の「ハンテン」展に続き、10月12日には〈天皇即位20年奉祝〉え~かげんにせーよフォーラム」を開催。全体会での鵜飼哲さんの講演に続き、六つの分科会で多様な討論を行った。さらに10月16日には、少人数ではあったものの「8・15実行委員会」との共催で10月31日に東京・品川の東京海洋大学で開催される、「在位20年奉祝」の意味も込めた「海つくり大会」に反対する討論会を行った。千葉と神奈川の仲間から以前の「海つくり大会」に抗議した取り組みの経験が語られた。

 さて「奉祝」側の動向だが、11月12日を一年限りの「祝日」とする法案が議員立法の形で通常国会に提出されたものの、国会解散のため廃案となったことに示されるようにまったく盛り上がっていないように思える。メディアの報道も4月の「結婚50年」ではTV、新聞を含めて大々的なキャンペーンを張ったが、8月30日の総選挙で自公政権が大敗して政権の座から転落し、民主党主導の鳩山政権が成立したという政治情勢の大変動があり、「在位20年奉祝」ムードはすっかりしぼんでしまっている。

 自民党は臨時国会開会翌日の10月27日の総務会で、11月12日を「祝日」とする法案を提出することを決め、民主党との調整に入ったと報じられていたが、最終的に調整がつかず「祝日化」はお流れとなった。他方地方議会のレベルでは「奉祝議員連盟」会長である森喜朗元首相のおひざ元・石川を皮切りに、福岡、広島、宮崎、秋田、新潟、神奈川、長崎、宮城、和歌山、岡山、岐阜、熊本、埼玉、鳥取、群馬、福島、山形、大阪、千葉、愛知の21府県議会で「在位20年奉祝」の決議が上がった(10月末現在)。注目すべきことは、この「奉祝」決議への共産党の対応がある県では不同意を込めた退場、ある県では賛成とまったくバラバラであることだ。民主党主導政権に対して「建設的野党」の立場を取るとしている共産党は、「象徴天皇制」に対しても「建設的」な態度を取るということなのだろうか。

 鳩山政権も10月6日には「奉祝」の政府式典を11月12日に国立劇場で開催することを閣議決定し、当日には皇居前広場を中心に警視庁・消防庁・郷土芸能などのパレード、夕方からは二重橋前の特設ステージで各界著名人の「お祝いのメッセージ」やEXILEが「奉祝歌」を歌う「国民式典」も行なわれる。しかし、そうしたイベントにかけた保守派・天皇主義者の思惑が「政権交代」によってかき消されがちであることも事実だろう。ましてよりによって11月12日にはオバマ米大統領が初来日し、日米首脳会談が行なわれることになっている。メディアの注目もいきおいそちらに集中することは確実だ。

 これは支配装置としての「象徴天皇制」にとって深刻な問題を突きつけている。「女性天皇」問題、皇太子妃雅子の病気と皇太子夫妻への右翼の側からの公然たる批判の噴出を含め、遠からぬ時期に予測される次の「Xデー」をめぐり、再び天皇制そのものの位置づけ論議が混乱した形で登場せざるをえないだろう。右派の側は大きな危機感を抱いている。自民党は、総選挙の過程でこの危機意識を「保守」アイデンティティーの再確立のための「反民主党」キャンペーンとして表現した。それは文字通り天皇制極右と全く同じ質のものであった。そしてこの危機意識の先端に「在日特権に反対する市民の会」(在特会)や「主権回復を目指す会」らレイシスト・排外主義集団の暴力的突出が位置している。

 私たち〈異議あり〉共同行動の出発となった「リードイン スピークアウト」集会のまさに当日(4月11日)、「在特会」は埼玉県蕨市でフィリピン人のカルデロンさん一家の「追放」を求めるデモを行い、このあからさまな排外主義キャンペーンに抗議した人たちを警察は逮捕した。8月には三鷹で「慰安婦展」の開催を妨害するために3日間にわたって会場に押し掛けた。そして8月15日の反「靖国」デモでは、大挙してデモ参加者を襲撃し、私たちの仲間を負傷させた。そして彼らは、全国で在日韓国・朝鮮人、中国人などへの排外主義的憎悪を駆り立てるデモを組織し、その行動はますます暴力的にエスカレートしている。

 私たちは「国民のために祈る」平和主義を前面に出した象徴天皇制が、暴力性と背中合わせの存在であることに目をそむけることはできない。私たちは、この差別と暴力を内包した「奉祝」式典にきっぱりと抗議する。11月12日、〈天皇即位20年奉祝〉に異議あり!政府式典反対全国集会・デモ(午後1時/京橋プラザ多目的ホール)への参加を皆さんにあらためて訴えたい。

(くにとみ・けんじ/新しい反安保行動を作る実行委員会)

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